消防用水と水道

水は人間の生活に不可欠なもので、水道はライフラインの一つと位置づけられている。この水道の設置目的の一つに「消火」があることはあまり知られていない。

かなり古い本であるが、廣瀬孝六郎「上水道学」(1953初版、1959改訂第5版)の第1ページにも、水道の必要性を論じたなかで、24行中7行を割いて消火について述べている。

更に上水道の消火上の大なる利益を忘れてはならない。・・(中略)・・多数の都市が大火災に驚いて上水道を作った事は歴史に示されて居る。 

 最近、水道の実務者の間で消火用水の確保と位置づけについて種々の議論が行われており、水道研究発表会でも発表が行われている。

  • 費用負担
  • 消防用水の水量・水圧と水道管口径

(1) 費用負担

 費用負担としては、消火栓の設置に関するもの、水道管の設置に係るもの、消火に要した水量に対するものがある。消火栓の設置については補てんが行われているようである。しかし、消火の用水の取り扱いは、料金を徴収している場合としていない場合があるようだ。水道管の設置に係るものは次項で述べる。

 参考までに、水道は基本的には税金ではなく使用料金で賄われており独立採算となっている。

(2) 水量・水圧と水道管口径

 水道は普及の時代から維持管理の時代になり、また、人口減少から水道使用量も減っている。そのため、水道管の更新の際に、その口径を使用量に見合ったものへと小さくする検討が行われるようになってきた。この検討の過程で最近課題となっているのが消火用水である。消火のための水量は家庭の使用量とは比較にならないほど大きい。また、人口に関わらず必要量は一定となる。そのため、人口密度の高い都市部では問題とならないが、人口密度の低い地域ではヒトが必要とする水量と比べて消火用水の方が大きいという状況が生じる。人口減少に伴う水量減少に合わせて縮径を検討しても、消火用水の必要のために縮径ができないケースが報告されている。

 直近で問題提起されているのは、こうした消防水利を維持するために「太い」水道管を設置する必要が出た場合にその差額を利用者に負担させてよいのか?という課題である。水道普及率を上げる過程においてはほとんど問題とならなかったが、水道事業の財政が悪化している現状では、妥当性が検討され始めたと考えられる。