シアン廃液

メッキ廃液が漏れたようだ。雪で埋もれたタンクの周りを除雪していたら、下部のバルブをへしおったようだ。いろいろ今後に生かすべき点があろうと思われる。

1) タンクの流用
そもそも記事の写真を見ると、タンクには"PAC"と表示してある。PACは、ポリ塩化アルミニウムで、水中の小さな粒子を寄せてくっつけて大きくする作用があり、そうした小さな粒子を水中から除去するために使われる薬剤である。そのタンクを使用しなくなったのであろうが、それを廃液の貯槽につかっていたようだ。メッキ廃液はおそらく強アルカリだろうから、PACとはパッキンなどの材質が違うので、きちんと考えて流用する必要がある。
また、法律上は、有害物質を貯蔵するタンクにいくつかの規制がある。使わなくなったタンクをほいほいと、有害物質の貯蔵タンクにしてしまうと、法律違反となる場合もあるので、注意が必要。

2) 防液堤
多くの工場では、こうした薬品を貯めるタンクは、防液堤と呼ばれるコンクリで囲われた区画のなかに置く。何らかの原因で、中の液体が漏れ出たとしても環境中に出て行かないようにするためである。しかし、防液堤をもうけていない企業も少なくなく、問題として認識されていた。こうした背景もあり、昨年施行された水質汚濁防止法では、有害な物質を貯蔵するタンクについての規定が設けられた。
防液堤は、漏れ出さないように出来るが、今回のようなタンクの下部をへし折っちゃうなんてことも防げるはずで、とても残念だと思う。

3) 責任?
 どういう状況かは記載がないので、憶測に過ぎないが書いておこう。除雪を請け負った業者も、事前にしらべて、工場内の物品を壊さないようにするべき。だが、この工場も、事前に何があるかを知らせるべきだし、そもそも防液堤のなかにタンクを置いていないという責任がある。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130226-OYT1T01215.htm?from=top

 電気メッキ業「黒坂鍍金めっき工業所」(本社・東京都大田区)は26日、岩手県花巻市二枚橋の花巻工場のタンクから、毒性が強いシアン化合物が含まれる廃液5〜6トンが流出したと発表した。

 同社によると、ほとんどは雪に付着し、同社は大半を回収したとしている。

 同社によると、漏れ出たシアン廃液は、ニッケルメッキの剥離液の廃液。剥離液は劇物の青酸ナトリウムを10%含んでおり、廃液1リットルは25人分の致死量にあたり、単純計算で約12万5000人分に相当する廃液が流出したことになるという。25日午前、除雪作業中の業者が、タンクのバルブに接触。破損部分から廃液が外に漏れ出した。

 市が25日に周辺2か所で行った検査で敷地外にある集水マスの水から、水質汚濁防止法の排水基準の140倍にあたる1リットル当たり140ミリ・グラムのシアン化合物を検出。26日の簡易検査でも、集水マスから水が流れ込む貯水池などへの流出を確認した。同市は「現段階で近くの河川への流出は確認されておらず、健康被害の報告は受けていない」としている